縁側で恋を始めましょう


当の本人は気持ちよさそうに寝転がっている。
はぁぁとため息をついて、部屋を見渡した。
暁の部屋、初めて入った……。
物が少ない部屋だ。もとはただの和室でがらんとしていたが、今も殺風景。
あるのは机と本棚、プリンターの棚に、いま暁が寝ている布団だけだ。洋服類は押し入れにでも入っているのだろう。

薄暗い部屋をよく見ると、机の上はパソコンと資料と思われる紙の束と本が積まれている。
その隣の本棚にはびっしりと本が積み込まれていた。
内容は辞書や図鑑類や医学書、法律書、マナー本や警察関係の本。マジックの本までもあり、多彩だ。きっと小説の参考にするのだろうか。
そして、その中で目を引くものが数冊あった。

「これ……」

本棚の一番下に入れられたハードカバーの小説。本屋などでも積まれており、見覚えがある。



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