縁側で恋を始めましょう


「あの、暁から何か連絡ありませんでしたか?」
「最近は特にないわね。そういえばこの前、引っ越したってことだけは聞いたけど、何度聞いても新しい住所は教えてくれなかったのよね」

そう言ってニヤリと笑う。
その見透かした様な笑顔にギクッとするが、暁の母はそれ以上は何も言わなかった。
暁は母親に、あの家に住んでいることは言うなと話していたが、これはもうお見通しのような気がする……。
何となく気まずくてそそくさと冴島家を出て、実家ではなくそのまま自分の家へ戻った。
家に帰っても、部屋は真っ暗で、暁が戻っている気配はない。

「帰ってないのか……」

肩を落とし、ソファーに腰を下ろす。
どこへ行ってしまったんだろう。
小学生の頃のキャンプがヒントってなんだろう。
そもそも、デビューしたことなんて教えてくれないと、わかるはずがないじゃないか。
滲む涙をこするように拭う。



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