縁側で恋を始めましょう


「はぁ」

大きなため息をついて、家の中を見渡す。
もう、私に黙っていたこととかどうでもいいや。教えてくれなかったこととかどうでもいい。知らないことがあったってかまわない。
もう暁を弟やただの幼馴染としてなんか見ないから。見れないから。

暁、早く帰ってきて。

暁がいないと家がこんなにも静かで広くて、ひとりで食べるご飯は味気ない。テレビを見てもつまらない。
暁がいないと、こんなにも寂しい。
もう、暁が来る前の生活になんて戻れない。

声が聴きたい。
声が聴きたいよ……。

繋がらない携帯を見つめるが、もちろん暁からの連絡などない。


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