雪の日に祝福を…。
◆4◆ 呪縛の門出
  


 〝愛〟は、いつ消えてくれるのだろうかと思い悩んだ。酷い裏切りをした人を私は、想っていた。
 あの頃は、彼が私の全てを占めていて身動きが取れなくなっていた。

 迫る結婚式に私は、逃げ出したかった。二人の結婚式を直視する勇気がなかった。
 でも、やっとの思いでセッティングした報復の舞台を見なくては私が前に進めないと思っていた。

 今思い返すと私は、なんて恐ろしい女なのか…。


 《 《


 月明かりの中で世界の終わりのように抱き合った夜を胸にしまって同僚として午前中を同じオフィスで過ごした。


「月依、一緒に行かないか?」


 同じく早退した相手からタクシー乗り場で声をかけられた。


「別々の方がいいと思うよ。そろそろケジメ付けないと。」


 昨日の今日で気持ちを整理出来ない相手は、彼女の一言に少し傷付いた。


「でも、行く所同じなんだし。」


「それでも、私たちの場所じゃないから。」


 一言言うとタクシーが停まる。


「先に行ってるから瑠々を連れて来てね。」


「ちょっ、月依!」


 言葉を探しているうちにさっさとタクシーに飛び乗り居なくなってしまった。


  
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