プルシアンブルー“俺が守る”
「友達から聞いたんだけど、なんかクラスメイトがたくさん死んじゃったんだって?俺、気になっちゃってさ。」



食事も済み片付けをしていると、ふと思い出したように譲琉が言う。



「姉ちゃん優しいから泣いているんじゃないかと思って。」


「大丈夫よ、泣いていないから。」



「そう?ならいいんだけど。姉ちゃんには俺がいるから。傍にずっといるから、安心してね。」


「ええ。ありがとう譲琉。」



爽築は笑って、譲琉の頭を撫でた。



譲琉が眠って、リビングに微かに響く時計の音に釣られて、遡り思い出すは昔の出来事。



笑うことは良いこと、なの?



私と両親にとって笑うことは、


ご機嫌取りと、世間体と、評価の対価と、親子ごっこの手段でしかなかった。



愛想が無いからと付けられた仮面が、鏡の中で笑っていたから私も出来ると思ったのに。



いつまで経っても、それは筋肉の運動にしか過ぎなくて。



ほら、今も鏡の中では仮面だけが笑う。



外してくれたのは、外してくれたのに、


また着けてしまったのは、全く同じ理由で。



意味を理解して見るリンドウは、一層輝きを増しているようだった。
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