プルシアンブルー“俺が守る”
「別れたかったから、別れただけ。それだけだって言っているでしょ……!」



これ以上は装えないと、爽築は喝宥の体ごと振り払って角を曲がった。



別れを切り出したのは、傷付けたのは、私。


恨んでもいい、憎んでもいい。


だから、生きていて。



罪生シェルターへと急ぐ。



「姉ちゃん。おかえり。」


「…!譲琉(ユズル)………、ただいま。」



鍵を開けようとしてかけられた声。


ニッコリ笑う桧亨譲琉は、爽築の弟でフリーターをしている。



「どうしたの?もう遅い時間よ。」


「もう…いつも子供扱いして。姉ちゃんにこれ、綺麗でしょ?」



渡されたリンドウの花束は、電灯に照らされ確かに綺麗だった。



「そうね、綺麗ね。」


「でしょ!姉ちゃんに似合うと思ってさ。入っていい?俺、飾るよ。あと、夕食食べた?適当に買ってきたんだけど、まだだったら一緒に食べよう?」



人なつっこい笑みを浮かべ首を傾げる譲琉は、さながら子犬だ。



「分かった。一緒に食べよ。」



そう答えるしか爽築には選択肢がないのだ。


花屋に行けば似合うと言って、必ずリンドウを買ってくる譲琉に対しては。
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