勘違いも捨てたもんじゃない

【外出禁止?それは何かの罰?】

…あれ?もっと、自分に都合よく捻って返して来ると思ったのに。

【罰とは違います】

【では何故?】

【誘われても行かないって事です】

あ、…。普通に言ってしまった。

【では、気を回さず素直にそう言ってくれたらいいのに。流石に夜は寒くなって来たね】

…ご飯攻めの次は、寒さアピールに変更になったのかな…。

【ここはやっぱり寒いね。心なしか息も白い気がする】

そんなに寒いの?何も無いところにでも立ってるの?

【銀杏の葉が落ちてる】

…え?下じゃないの?もしかして、あの公園に居るの?

ピンポン。
え、じゃあ、この来客は誰?…え?武蔵さん?武蔵さんなのかな…。

玄関に近い廊下にあるモニターを確認した。
…姿が。見えない位置にでも居るのかな。…どうしよう。

【安住さんは公園に居るのですか?】

【さあ、どこだろうね】

ん、もう…教えてくれてもいいじゃないですか。あ、そうだ。武蔵さんにメールをしたらいいんだ。

【武蔵さん、今、どこに居ますか?】

…。
んー、タイミングが悪いのかな、返信が無い。
あ、という事は、これは、安住さんが押してるんだ。…私の勝ちね。じゃあ、開けなくていいんだ。…。

ブー、…。あ、武蔵さんだ。

【家だ。悪い、風呂に入っていた。どうした?】
真希、もしかして来るのか?

あ、やっぱり武蔵さんじゃなかった。

【ううん、何でも無い。居るかなと思っただけ】

【なんだ、そうか。慌てて出たからまだびしょ濡れなんだ】

【あー、ごめんなさい。もう大丈夫だから、ゆっくり髪も乾かして?】

…。

【ハハハ、なんだそれ。もう終わりか?まだ風呂の途中なんだ】

【大変。じゃあ、早く戻って入って?】

【ああ、もう浴室に戻ってるから】

【じゃあ、あったまってね。ごめんね、おやすみなさい】

【おやすみ】

さっきから着信を知らせている。…安住さんだ。


…家に居たらなんだってんだ?…今のは何だったんだ。強引に来るってことでもなさそうだったし。真希……。随分慌てて…。
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