ふたりで

彼の正体


彼と本屋で会い、コーヒーショップに行ってから、私はずっと彼のことを考えている。
しかし、なかなか思い出さない。ヒントの幼稚園や小学校の友達をいろいろ思い出したリ、アルバムを見たりしたが、さっぱり手掛かりがない。


夕飯の用意を手伝いながら、考え事をしている私を見て、母が、
「どうしたの?」
と心配そうに聞いてきた。

母に話すのはどうかと思ったが、お手上げ状態の私は、母の記憶力に頼ってみることにした。


「お母さん、私が幼稚園や小学校の時に、芝宮君って、聞いたことあった?」
と私が尋ねると、
「んー、芝宮君ねぇ。」
と、母でも、聞いたことがないらしい。

「芝宮さんなら、知ってるんだけどなあ。」
と言う母に、
「その人、だあれ?」
と、聞き返す。

「真愛は、覚えているかな? お母さんの高校時代の友達で、坂上律子さん。彼女の旧姓が芝宮よ。あなたが小さい頃、よく彼女の息子さんたちと一緒に、食事に行ったり出掛けたりしていたのよ。ええと、確か真大(まさひろ)君と幸大(こうだい)君、覚えてなあい?」


一気に、あの頃の思い出がよみがえってきた。そうだ、まー君は、もう中学生だったから、あまり遊んだことがなかったけど、こーちゃんとは、同じ歳で仲よく遊んだ記憶がある。

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