プラネタリウム

強い絆

大翔は修学旅行に行った。

授業受けながら…バイトしながら…楽しんでいるんだろなぁ…頭の中そればっかり。

時々くるメールには色々な景色やセルカ棒で撮ったであろう友達との写真が添付されていた。

「楽しそう…私も大翔と行きたかったよ…」

リビングに居ることを忘れて言ってしまった…。

父と母は聞こえない振りしてくれた。

「お風呂行ってきまーす」と私。

上手く逃げた。

私はお風呂に一時間も入ってた。

少しのぼせてしまった私は水を飲んで寝ようと布団に入った。

「おやすみ」と大翔にメッセージを送って。

すぐに返事がきた。

「おやすみ。お土産買ったよ」と。

なに買ってくれたのかな?
楽しみにとっておこう。

「ありがとう‼楽しみにしてるね‼」と返事を返した。

後2日も会えない…声も聞けない…。

長い長い2日。


その長い長い2日はやっと終わった。


ケータイが鳴った。
待ってました‼と言わんばかりにすぐに電話にでた。

「はい‼」

「早っ‼」って笑う大翔。

そして…「ただいま」って…。

「おかえり‼声聞きたかった…今すぐ会いたい。」

大翔は「今日は無理でしょ…明日会おう…なっ?」

私…子供みたい。

「わかった…」

いつの間にこんなに好きになってたんだろう。

大翔より私の気持ちが大きい。

それでいい…本当の事。

大翔は私をいつも子供扱いする。

さっきみたいに…優しい声で…私は上手く丸め込まれる。


明日着ていく服を選んだ。
あれこれクローゼットから出したら、足の踏み場がなくなっていた。

迷って決めた服はワンピース。

しかも買ったけど一度も着た事がなかった。

私には少し大人なデザイン。

大好きなブランドのワンピース。

大翔は何て言ってくれるかな?

明日が楽しみだなぁ…。

床に散らかった服を片付けて布団に入った。


眠れないと思っていたのに気づいたら朝になってた。


朝から全開の私は起きてすぐ大翔に会いに行く準備をした…ご飯食べて、歯磨きして、顔洗って、着替えて、メイクして準備完了‼

家を出ようとした時、インターフォンが鳴った。

「はーい」

ドアを開けると大翔が立っていた。

びっくりしすぎて声にならなかった…。

「あかね…来ちゃった」って。

昨日わがまま言った私のために早起きしてくれたの?

本当に大翔はいつも私を喜ばせてくれた。

「………大翔、あがって‼」

と言ったものの、ベッドの布団は起きたまま。

脱いだパジャマも脱いだまま布団の上に投げてあった。

見られたくないから急いで片付けた…遅いけど。

大翔は「そんなに急いでたの?」と聞いてきた。

私は「早く会いたくて…」と答えた。


大翔は修学旅行の話をしながら、お土産をくれた。

生チョコ…クッキー…お饅頭…食べ物ばっかり。

だけどお土産より会えた事が嬉しい。

一緒に食べた。夜ご飯いらないねって話しながら。

さすがに食べきれず二人の残りは父と母へおすそ分け。


「あかねってこんなに甘えん坊だったっけ?」

大翔…急に何?面倒になった?

「………甘えん坊じゃなかったかも…でも大翔に会って甘えん坊になっちゃった…」

自分じゃないみたいで…。

こんな事言えるようになっちゃって…。

大翔…何か言ってよ。


「今のあかねの方が好きだけどね…俺」


顔が赤くなるのがわかる。

その言葉…録音したいよ…。


「大翔…ずっと好きでいていい?私ね…絶対別れたくないから…ずっと一緒にいて?」


好きで…好きで…好きで…

好きすぎて…大翔の全部独り占めしたくなって…

どんどん欲張りになっていく…

止められないの…この気持ち…


悲しくないのに、止まらない涙は何?

たった4日連絡取れなかっただけなのに…

何でこんな気持ちになっちゃうの?

楽しく過ごそうと思っていたのに…

大翔を困らせてる…

だけど大翔は…

「こんな俺でよかったら…ずっと一緒にいよう」って言ってくれた。


最後にカバンから出したお土産…。

「はい」って…。

「開けていい?」

「うん…開けてみて」

お揃いのイヤホンジャック。

「かわいい…」

二つ揃うとキャラクターがキスするの…。


私と大翔のケータイで揺れるキャラクター。


「大切にするね…」


この頃から私はずっと進学希望だった気持ちが揺らいでいた…。

離れたくないから。


側にいたいから…離れてしまったら、別れてしまうんじゃないかって不安で仕方ない。


もう、決めなきゃいけない時期なのに答えを出せない自分がいる。



大翔は就職活動をしていた。

「あかねは進学だよね?志望校決まった?」


「………就職しようかな………」


「何で?」大翔の声が変わる。

「大翔と離れたくない…」

私の本心。

「それはダメだよ…あかね…」

「迷惑って事?」

「そうじゃない。俺のためにそう考えてくれるのは嬉しいよ。嘘じゃない…だけど俺はあかねの夢応援したい」

「だって、もし大翔が今受けた会社決まったら…私達全然会えなくなっちゃうじゃん…」


大翔が面接を受けた会社は電気屋さん。
とは言ってもお店じゃなくて、配線工事の方。

マンションやショッピングセンターとか大きな現場に入ったら残業があったり、休みも不定休になる。


歯科衛生士の学校は今は3年制だけど、私が入ろうと思っている今はまだ2年制。

ざっと考えて2年はすれ違いの生活。

私には出来ないよ…。


「あかね…2年だよ。確かに長いよ。だけど頑張ろうよ‼乗り越えていこうよ…ずっと就きたかった職業なんだから夢叶えてよ…」


そうやって背中を押してくれた。

私は何度も大翔に背中を押してもらって今試験会場にいる…。


離れたくない…

だけど夢を叶えてほしいと背中を押してくれた大翔の気持ちも無駄にしたくない。


頑張るね…大翔…。


この頃には大翔の就職は決まっていた。
面接に受かった…電気工事の仕事。

素直に嬉しかった。
二人でお祝いしたね…。


だけどね…寂しいの…不安なの…

いつからこんなに弱くなってしまったのかな…。

一人でいいとか一人がいいとか思っていた私はもういなくなってしまった。


今は冗談でも一人がいいなんて言えない。


迷いながら受けた学校に私は受かった。

嬉しい半分…切ない半分。


こんな調子で2年頑張れるのか不安だ…

先が思いやられる…

そんな私に付き合ってくれる大翔は大変だろうなぁ…。



そうやってあっという間に時間は過ぎていく。

時間を止めたい…。
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