プラネタリウム
結局…一睡もできなかった。

自問自答を繰り返しすぎてどうでもいい頃に朝が来た。

「最悪…」

ベッドから起き上がる。

いつも通り学校へ向かう。

眠くて眠くて倒れそうになりながら…。

今日は後ろから「おはよう」の声がない。

何でかな…寂しい。

もう学校へ行ってしまったのかな?

「あ…かね?」

振り向くと北斗だ。

「髪、切ったの?」

「うん」
似合う?なんて聞けないし、勇気もない。

「最初わかんなくて…思い切ったね‼いいじゃん」

今…いいじゃんって言った?
何この満たされた感じ。

私の顔、今猿みたいに赤いんだろうな…。

誤魔化すように「頭軽くなった‼体重減ったかな?」

なんて会話して笑った。

ドキドキする感覚もこんなに心地いいものだなんてね…。
私人生損してた。


ねぇ…
そのくしゃって笑った顔何度見てもあきないね。

ねぇ…
あかねって呼ぶ優しい声もう1回聞かせて…

昨日の夜の自問自答の答えは…好き…

私は北斗に恋をした。
何も知らないのに…。

見てるだけでいいの。
今のこの関係をなくしたくないの。
だから…絶対に口にしない。
好き…の2文字。

今日の放課後はりこと遊びに行った。
初‼記念すべき初‼
プリクラ撮ったり、クレープ食べたり、りこの恋話聞いたり…友達といるとこんなに時間が経つの早いんだね。

こんなに楽しいものなんだね。

りこの彼氏は隣のクラスの子。
顔は知ってるけど、名前は知らなかった。
「ゆう」と呼んでいたからそれが名前かと思ってたら、「ゆうり」という名前だった。

りこの一目惚れで始まった恋で、告白3回目にやっとOKをもらったんだって。
ゆうり君は中学校3年間、幼なじみのひかりさんと付き合ってたんだって。
二人が別の道を選んだ事とひかりさんに好きな人ができてしまって別れたとりこが言っていた。
「未練あるのかも」って切ない顔でりこが話してくれた。

でもね…
「好きなものは好きだし、傷つくのおそれてたら何もできないから‼いつか私だけのゆうにしてやるんだ‼」

と笑うりこはやっぱりすごいや。
本当は辛いはず…
本当は苦しいはずなのに…

笑って言えるりこはやっぱりすごい。

だから…決めた…

「私の話し聞いてくれる?」

「もちろん」

過去の話し…
私には消したい出来事。

りこ…私に幻滅した?

「ありえないね…」

そうだよね…

「あかねもあかねだよ‼なんで黙ってんの‼」
「でもさ…一人でよく頑張ったね」

……「弱いだけ」……

「一人で黙っている方が辛くない?」

そんな事ない…

「逃げてきただけ」

「あかね、その強さがあったら変われるよ‼」

ありがとう…。

変われるように、なりたい自分になれるように、負けないよ‼私‼

あの頃と変わったこと1つ目。
一人じゃない‼

帰り際りこにもらったキーホルダー。

さっきゲーセンでとったやつ。

「あかねに似てるからあげる」

「えっ‼」

笑いながら手を振って帰っていったりこ。

失礼だよ…りこさん…

これって…サル…しかもほっぺた赤い…

気付かれたかな?北斗への気持ち…。

今は聞かないよ…とりこに言われた気がした。

私はカバンにつけた。

自分にそっくりなサル。

「やばっ‼門限過ぎてる‼」

猛ダッシュ‼
意外に走れるもんだね…感心してる場合じゃないけど。

家の近くに小さな公園がある。

公園と言ってもベンチ2つ、広場だけで遊具はない。

人影が2つ…

デートかな?いいなぁ…

待って…見たことある横顔…
北斗…?
隣には女の子…。
泣いてる?
ケンカしたのかな…それよりなにより
彼女いたんだ…
目にしてしまうとリアルすぎて
距離を感じてしまうんだ。

門限の事はこの一件ですっかり忘れてた。
いうまでもなく叱られた。
かなりの勢いで。
でも痛くもかゆくもなかった。

北斗と彼女が頭から離れなくて、叱られるより痛かった。

私、やっぱり北斗が好きだ。
だから痛いんだ…。
心の場所なんてどんな医学書にも載ってないのに、胸がきゅっと痛むんだ。

それが恋なんだ。
誰かを想うとはこういう事なんだね。

切ないけど素敵な気持ちだね。

私は友達でいい。

北斗と話せるなら…
くしゃって笑う顔に会えるなら…
それでいい。
< 3 / 40 >

この作品をシェア

pagetop