豊中まわり
ある日の20分休み。

深瀬が本を持って一人で教室を出た。

最近長い休み時間は図書室へ行っていることが多い。

ちょうど僕も本を持ってきていたので、トイレに行った後、図書室へ行こうと思った。

図書室の扉を開けようとしたら、中から氷上の声が聞こえた。

なんで氷上…と思い窓から様子を見ると、深瀬が氷上と楽しそうに話している。

深瀬は氷上を避けていたはずなのに…

なんて楽しそうなんだ…

茫然となった。

話している内容はわからなかったし、

偶然なのか必然なのかもわからない。

しかしそこには見たことないくらい素敵な笑顔で笑う深瀬がいた。

しかし、次の瞬間深瀬の顔が凍りついた。

後ろの扉からクラスの女子が入ってきたからだ。

派手なロゴの入った服を着たやつと、

やたらデカイリボンを頭につけたやつ。

このリボンの方は性格極悪。

去年も同じでクラスだったが、僕の席の隣になって、

「最悪」

と言ったのはこいつだ。

三上早妃(みかみ さき)。

普段は小さめの身長を生かして超ブリッコだが、僕のような非イケメンには裏の顔を見せる。

今、表の顔で図書室に入ったのだから、氷上がターゲットなのだろう。

深瀬は三上にとってかなり邪魔な存在に違いない。

あの派手な服を使って、直接手を下さずに深瀬を威圧するつもりだな。

「ゆうりー。氷上と何やってんのー。」

派手服のデカイ声が響きわたる。

想像通り。しかし派手服、ここは図書室だぞ!

深瀬が席を立った。

僕は急いでその場を立ち去った。


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