プロポーズ(第4話)


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「うんうん」


カバサワはあたしの話にうなずいてくれた。

ショウコさんが我が家に来た翌日の月曜日、高校からの帰り道だった。

カバサワとは家が近いので、ときどきいっしょに帰る。

あたしはきのうのことをカバサワに話していた。もちろん妊娠のことは言わない。

ショウコさんのことをほんのちょっと……少しだけ誇張して……本当はだいぶ悪く言って、あの女がお兄ちゃんを盗っちゃった、と憤慨していたのだ。

カバサワは何度もうなずいてくれた。

でも、わかっているのかどうかは、わからない。なにしろこいつ、バカだからなぁ。

カバサワには椛澤太一という立派な漢字の名前がある。

でもあたしはいつもカタカナで、カバサワ、って呼んでいる。ときには、バカサワ、って呼んだりもする。

なぜならカバサワはバカだからだ。


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