ホテル王と偽りマリアージュ
「ひゃっ……!」


一哉の腕にお尻を支えられて、私は思わず彼の顔を抱きしめてしまった。


「ぶっ……。椿、気持ちいいけど前見えない。危ないよ」


胸元から聞こえるからかうような声にハッとして、慌てて腕から力を抜く。
一哉は迷う様子もなく室内の階段に向かい、トントンとリズムよく足音を立てながら、寝室までの数段を上りきった。


肩で押しながらドアを開け寝室に入ると、いつも一哉が使っているベッドに、ゆっくり下ろされた。
そして、彼自身も膝を乗せベッドを軋ませながら、私の肩を押して静かに横たえる。


スモーキーピンクの天井を目にすることなく、一哉に再び唇を奪われた。
さっきと同じ恥ずかしい音が寝室に響く。
一哉はキスする位置を下の方にずらしていきながら、私の胸を服の上から大きな手で揉み始めた。


「んっ、あ……」


ちょっと性急さを感じる一哉の行動に戸惑いながらも、脳に伝わる刺激から、声が漏れてしまう。


「あ、一哉、待って、やっ……!」


あんまり意地悪に大きく動かすから、服の下でブラがずれていく。
敏感な胸の先に布が擦れ、甘く疼く。
そんな感覚に、身体がビクンと震えてしまった。


「嫌? 椿」


意地悪に細めた瞳で探るように聞かれて、頬がカッと火照るのを止められない。
私はぎゅっと目を閉じ、限界ギリギリまで顔を横向けた。
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