ホテル王と偽りマリアージュ
「物足りない? じゃあ、椿。全部脱ごうか」

「えっ……」

「直接触って欲しいでしょ?」


楽しげな声に反応した時には、一哉は既に私の服を脱がしにかかっていた。
裾から大きく捲り上げ、素早く背中に回した右手で私のブラを呆気なく外す。


ものの数秒でブラごと頭から引っこ抜かれ、私のささやかな胸が一哉の前で露わにされてしまった。
恥ずかしさのあまり、慌てて両手を交差させて隠す私の前で、一哉は上から一つずつシャツのボタンを外す。
そのゆっくりした動作とは裏腹に、割と豪快に脱ぎ捨てた。


「っ……」


初めて見る意外に逞しい一哉の胸にどうしようもなく色っぽさを感じて、私は鼓動を跳ね上がらせた。
ドキドキするのに、彼の美しい身体から目が離せない。
一哉は私の視線に気付いて目を細めると、なんとも妖艶な表情を浮かべた。


「椿も、隠さないで。ちゃんと全部俺に見せて」


そう言って、私の両方の手首を掴み取った。
『あ』と声を上げる間もなく、観音扉のように開かれてしまう。


私を見下ろすグレーの瞳には、確かに男っぽい欲情の光が宿っている。
そんな一哉にドキッとして、逃げ出したくなるのにきゅんとする。
身体の奥底に、今まで感じたことのない疼きを感じる。
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