ホテル王と偽りマリアージュ
一哉は私の頬から手を離すと、ふっと短く笑ってしっかりと背筋を伸ばした。


「なんだ。椿も俺が欲しくなった?」


タキシードの合わせを両手で引っ張って直しながら、彼はちょっと不敵な笑みを浮かべる。


その言い方に頬が熱くなるのを感じながら、私は無言で彼の右腕をしっかりと抱き締めた。
一哉はそんな私に優しく細めた目を向けている。


「じゃ、後一時間、仕事頑張ろっか」


そう言ってドアに手を掛ける一哉の横顔は、もう立派なホテル王のものに戻っていた。


「うん」


私も一哉に大きく頷いてみせながら、そっと彼の腕に手を掛ける。


一哉が大きく開いたドアの向こうで、セレモニーは賑やかに盛大に続いていた。
私と一哉が進む先を、人々が道を開けて譲ってくれる。
海が割れるように、大きく開ける視界。
私と一夜は寄り添い合って、この先続く幸せな未来に向かってゆっくりゆっくり突き進んでいく。


この力強い腕に手を預けて。
隣に一哉の温もりを感じながら、どこまでも、どこまででも。
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