スーパーヤンキー!!
昼食が用意されている"親父の部屋"に七人を連れて入った。


なぜ親父の部屋かというと、それはもちろん父も交えて話をする為だ。これは親父からの要望だった。


部屋に入って右側に俺と親父が並んで座り、左側に七人が座る。思いのほか緊張しているようだ。まあ極道のしかも本邸になんて来たらそうなるんだろうな。


そんな事を思いながら、親父をちらりと見る。


親父は俺の目を見て少し頷いた。そして、


「お前らが龍花の言ってた奴らか。なかなかいいツラしてんじゃねぇか」


「…………………」


「まあそんなに緊張するこたねぇよ。話をするのは俺じゃなくてこいつだ」


「ああ。でもその前に、昼食を食べねぇと腹が減って餓死しちまう。それに、まだ名前も聞いてなかったんで」


俺の言葉を聞くなり、七人は不満そうな顔を隠す事無く俺に向ける。すると、親父が笑いながら言った。


「まあ、こっちも素性明かすっつったみてぇだし、名前くらい教えてもらわねぇとな。それに、お前らどうせ学校に友達なんていねぇだろ?」


図星だったようだ。だが、まだ口を固く結んでいる。粘るな。親父、畳み掛けてやれ!


「お前、浅葱っつったろ?俺はてめぇの親父の知り合いでな、こいつを白蘭に入学させたのもそいつの頼みだったんだよ」


自分の身内の知り合いだと知って少し気が緩んだのか、顔が先程より安心しているように見える。親父、でかした。チッと舌打ちをした音が聞こえたが、それは聞こえなかった事にしておこう。


「浅葱 蓮(あさぎ れん)。名前だけでいいんだろ?」


浅葱さんが名乗ると、他の六人も口を開く。右から順に、


「鳴海 瑛凛(なるみ えいり)」


「安藤 颯真(あんどう ふうま)」


「山吹 万冬(やまぶき まふゆ)」


「緒方 葵葉(おがた あおば)」


「真辺 蒼茉(まなべ そうま)」


「柏木 郁人(かしわぎ いくと)」


「フムフム………れんれんに…えいりんに…ふうちゃんに…まふまふに…あおばんに…そうまちんに…いくとん!どうだ!?あはははは!なかなか良いあだ名をつけてしまった!さすがは俺!」


呆然とする七人に親父は躊躇いなく言った。


「悪ぃな。こいつちょっと頭のネジ外れてるとこあんだわ。勘弁してやってくれ」


「いや、ねぇよ?何言ってんだクソ親父!俺の素晴らしいあだ名センスを舐めんなよ!」


「てめぇの考えてる事なんざたかがしれてんだよ!このクソガキが!親に向かってなんつー口の聞き方しやがる!」


「うるせぇ!てめぇにゃあ言われたくねぇんだよ!この前猫にネコネコなんて名前つけてたじゃねぇか!名前になってねぇんだよ!」


「あぁ!?何言ってやがる!正真正銘可愛い名前じゃねぇか!いいだろう!表に出やがれ!今度こそ決着つけてやる!」


「望むところだ!尻尾巻いて逃げんじゃねぇぞ!」


「誰がてめぇ相手に逃げるかよ!1分でケリつけてやる!」


「「「「「「「………ぷっ、あっはははははは!!!!!!!」」」」」」」


俺と親父が張り合っている間、どんな表情をしていたのかは分からなかったが、急に七人の笑い声が部屋中を包み込んだ。結構皆デケェ声で笑うんだな。まあこれでポーカーフェイスは崩せたわけだ。早かったな。短い戦いだった。まあ、元々こっちが素なんだろう。


「?」


だが俺は、訳が分からず静止する。そして、自分が笑われている事にやっと気づき、少し顔が熱くなる。だが、今度こそ確実に話すチャンス到来だ!


その時、七人の両耳につけられているピアスがキラキラと太陽の光を浴びて光った。俺は学校にいる時から気になっていた事を尋ねてみた。


「なぁ、学校にいた時から気になってたんだけどさ、浅葱さん達の耳についてるピアス、左耳につけてるのは皆同じ色や形の物なのに、何で右耳につけてるやつは色も形も違うんですか?」


まだ腹を抱えて笑っている浅葱さんが少し悩んでから答える。まだ俺は親しいわけでもねぇしな。


「あー、これは俺らの象徴みてぇなもんだよ。左耳には俺ら七人が一つである事の印。右耳には、それぞれのマークとしてつけてる」


「へぇ。そうか。いいな……親父、俺らもなんか組全員で家族としての印をつけねぇか?」


「駄目だ。てめぇそんなもんつけてみろ、一瞬で進藤組だってバレんだろうが。馬鹿か」


「だよなぁ。ま、仕方ねぇか。……れんれん、ありがとう。教えてくれて」


「その名で呼ぶな。感に触る」


「えー、いいじゃないですか。減るもんなんて何もねぇんだし」


そう言って俺は、目の前にいる七人をまじまじと見つめる。よく見たら全員美形じゃねぇか!これで喧嘩も強いってどういうことだ!


ジロジロと見すぎていたのか、浅葱さんは不快そうな顔をして、


「何見てやがる。気持ちわりぃな」


「いや、れんれんもえいりんもふうちゃんもまふまふもあおばんもそうまちんもいくとんも皆なかなかのイケメン揃いだなぁと」


「うるせぇよ」


えいりんが言う。


「おお、えいりん。君のその赤い髪は地毛かな?ものすごく似合ってんじゃないですか?」


「なんで疑問形なんだよ!地毛なわけねぇだろうが」


「まあまあ。照れるな照れるな。そしてえいりんの横のふうちゃんよ!君の金髪は金メダルの輝きより眩しいようだ。生まれつきかな?」


「気安く呼んでんじゃねぇよ!ブス!」


「おおっと、この子は反抗期かな?全く、世話がやけそうだ。ま、この俺にドーンと任せなさい!立派な大人に育てあげてみせよう!」


「チッ、調子乗りやがって」


「おおっと、ここにも反抗期の子がいたようだ。いくとんよ、その綺麗な青い瞳で誰を落とすつもりかな?俺はもう落ちてしまったよ!あはははは!」


「こいつイカレてんじゃねぇか?」


「ちょっとまふまふ。いくらいくとんの青い瞳が羨ましいからって妬むのはよくないぞ。まあ気持ちは分かる!だがまふまふよ。君には頬にあるその綺麗な桜模様の刺青があるじゃないか」


「蓮、こいつをどうにかしてくれ」


「関わりたくない」


「ちょっとそうまちん。その片目につけてる眼帯がよく似合っているな!……じゃなくて、れんれんに助けを求めるな!男なら自分でケリをつけろ!」


「はぁ………」


「れんれんよ!サラサラした茶髪にピンをつけるなんて贅沢な!更にそれが似合いすぎて憎らしい!俺もピンの似合う女になりたかったぞ!」


「……………………」


「そう言えばさっきから一言も発していないぞ!あおばん!どうした!?病気か!?任せろ!俺が病院まで運んでやる!」


「………………………チッ」


「ん?どうした?鼻だの口だの舌だの、いろんなところについてるピアスが痛々しいぞ!あおばん!ちゃんと真面目に生きなさい!俺がしっかり指導してやる!」


俺がついつい勢いで七人全員に絡んだ挙句、訳のわからない事をペラペラと言い出したせいで親父や七人全員がイラついているような、困っているような、複雑な表情をしている。


だが俺がその空気に気づく事はなかった。
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