スーパーヤンキー!!

俺の家の前に車を止めると、桜さんは素早く降りて助手席と後部座席の扉を開ける。そして頭を下げて、


｢お疲れ様です。ここが、"進藤家"の本邸でございます｣


と言って、"進藤家"の門を手のひらで示す。


七人は、少し驚いたように顔を歪めていたが、いつまでもポーカーフェイスを貫き通すつもりらしい。絶対そのポーカーフェイス壊してやる！


俺は新たな目標？を掲げ、その門を両手で押した。


ギィィィと唸るように開いた扉の向こう側には、ヤクザ------ではなく、沢山の子供達が俺を出迎えてくれる。


｢おかえりなさい！龍花ちゃん！｣


｢おかえり！学校楽しかった？｣


｢龍花おかえり！今日俺、親父に竹刀の使い方教えてもらったんだぜ！｣


次々に話しかけてくる子供達。俺は津波にでもあったかのような錯覚を覚える。まあ、そんな訳ないのだが。


俺の後ろから着いてきていた七人も予想外という顔をしていた。ポーカーフェイスが崩れる日も近いだろう。


俺はそんな子供達の頭をいつものように優しく撫でて、


｢すまんな。今日はちょっとお客様が来てるからあまり騒がしくしないようにするんだぞ｣


子供達は不思議そうな顔をしていたが、後ろの七人を見て、


｢はーい！｣


と、元気よく返事をした。


俺はホッとして玄関まで子供達と一緒に手を繋いで歩く。


玄関の扉を開けると、中からごつい声が一斉に浴びせかけられた。まあ、いつもの事だから俺は驚かなかったが。後ろの七人は違うだろう。刺青を肌が見えないほどしている、体格のいい奴らが何人もデケェ声出してんだからな。案の定、肩を少しびくつかせていた。


｢龍花ちゃんおかえり！｣


｢おうおう！早速彼氏でも連れてきたのかぁ？｣


｢でも七人は多いぞ？一人にしとけ｣


｢龍花、お前意外とモテるんだなぁ｣


子供達はまだ許せたが、もう勘弁ならん。俺がここまで隠してきた性別の事をペラペラと喋りやがって！このヤクザ共め！いや、クソジジイ共！俺はついに声を荒らげた。


｢おい！てめぇら！人が黙って聞いてりゃあ余計な事ぬかしやがって！全員指切り落とすぞ！｣


｢ギャア！龍花がキレたぞ！全員逃げろ！｣


｢俺らは龍花ちゃんに敵わねえからなぁ。マジで指は勘弁だぜ｣


｢こっちが勘弁だわ！俺はまだこの七人に何も説明してねぇんだよ！ちょっとは気を使え！このクソジジイ共が！｣


そこまで言うと、俺はヤクザ共の間を抜けて俺の前に出てきた優真に抱きつく。


優真は嬉しそうに俺の背中に手を回してくれる。


｢龍花姉ちゃん、おかえりなさい！僕ね、今日父さんに仕事の話を聞いたんだ｣


喜んでいるのが顔を見なくても伝わってきて、さらにギュッと抱きしめる。


すると、今度はヤクザ共の後ろから低い声が聞こえてきた。


｢龍花、昼食の支度は出来てる。後ろにいる彼らにも早く入ってもらえ｣


｢分かったよ。じゃあまた昼食の時にな、優真｣


｢うん！｣


それから俺は、七人を連れて部屋にあがった。