スーパーヤンキー!!
うるさかった一階や二階に比べ、三階は不気味な程静かだった。淡々と歩く俺の足音しか耳に届かない。


とりあえず俺は一番手前の部屋から順に開けていくことにした。まずは三年一組と書かれた教室。


ギィィィと鈍い音をたてて開いた扉の向こう側には誰もいない。舞い上がった大量の埃と、つーんと鼻にまとわりつく臭いだけだ。


三階には三年のクラスがあんのか。まあ、俺の中学ん時とだいたい同じだな。でも六クラスあるってのは多い方なのか?


扉を閉めると、また同じようにギィィィと鳴る。


他の教室も全て開けて確認したが、誰もいなかった。そして最後、三年六組の教室のさらに奥。もう一つの扉があった。だが、その扉には何も書かれていない。


俺はその扉のドアノブに手をかけ、そして少し重たいその扉をゆっくりと押して開ける。


中は真っ暗だった。何も見えない。朝なのに。明るいはずなのに。何も見えない。


すると、誰かの声が聞こえた。


「貴様、誰がここへ来ていいと言った?」


その声は低く、少なからず怒りが込められているのが分かる。


「おい、てめぇ。死にてぇのか?」


また声がした。今度は違う奴の声。


俺はとにかく顔が見てみたいと思った。そして電気のスイッチを探す。だが暗くて何も見えない。


「この部屋に電気なんざねぇよ」


また別の奴の声。


俺は少しイラついた。顔も見せずに声だけ出してくる。俺は正面から話したいのに。だから少し挑発してみようと思った。


「なあ、あんたらさぁ、なんでこんなくらい部屋にいるわけ?顔くらい見せろよ」


シーン……


何も聞こえない。絶対誰かがいるはずなのに、姿が見えないだけでいないように錯覚してしまう。


その時だった。


俺は反射的に右に避けた。


そしてそのすぐ後に聞こえたガチンという、何かが地面に当たる音。


そして、シャッという音と共に朝の光が容赦なく部屋の中に差し込んでくる。


俺はその瞬間状況を理解した。


目の前にある真っ黒なカーテンが開き、そのカーテンの前に横一線に並べなれた七つの椅子。そしてそれぞれの椅子に、七人の不良が俺が来る事を知っていたかのように座っている------


自分のすぐ横を見ると、思った通りナイフが地面に突き刺さっていた。しかも少しめり込んでいる。こんな硬い地面によくもナイフを突き刺せるものだ。驚きや恐怖よりも感心した。


その間も、その七人の不良は俺を冷たい目で見続ける。だが、その瞳の奥には何か深いものが込められているようにも見えて……
< 8 / 37 >

この作品をシェア

pagetop