女の子として見てください!
すると後ろから飯尾くんが。

「えー? LINEのIDくらい、減るもんじゃないし、割と誰とでも交換しますよぉー」

と、ニコニコしながら言ってきた。
彼は天然っぽいところがあるから悪気はないんだろうけど、ちょっとイラッとしたので、胸ぐらを掴んで脅した。涙目で「ひっ」と言われたので、すぐに手を離したけど。


すると課長が新聞を閉じ、再び口を開く。

「松城。浮れるのもいいけどよ、今日から新しい理事官が来るんだからちゃんとしろよ」

あ、そうだった。今日からだったな。
理事官は、いわゆる警視で、副課長的な役職だ。
今日からこの捜査一課にやってくるその理事官は、若くしてその地位を得た、いわゆるエリートだという。


課長からは「お前、男に惚れやすいから心配」とか言われたけど、今の私は翔さんのことしか考えていないから大丈夫だ。


課長は話を続ける。

「俺は、お前が女だからっていう理由で、新しい理事官に舐められないといいなと思っている」

「え? 課長、私のことをそんなふうに思ってくれてたんですか?」

「お前の検挙率はそこらの男にだって負けてねーからな。むしろ、同世代の男と比べたら圧倒的に勝ってるだろ。まあ、検挙率が高いってことはそれだけ犯罪遭遇率が高いとも言えるのかもしれないけど。俺はお前に、陰ながら“犯罪を呼ぶ女”という異名をつけている」

異名っていうか、ただの悪口じゃないか、それ。
だけど、今日の私はそれくらいじゃ怒らないぞ。
翔さんのことを考えたら、ドキドキウキウキしちゃって仕方ないから!
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