女の子として見てください!
そう言うと、翔さんはニッコリと笑って、

「こちらこそ」

と答えてくれる。


私、こんなに幸せでいいのかな。

翔さん、拙い妻ですが、これからもよろしくお願いしますね。



その後、いったん外に出て、参列者のみなさんと一緒に写真撮影をすることになった。

会場の外は高原のように緑が広がっていて、風も気持ちいい。

披露宴は気恥ずかしいことも多いけど、みんなで写真撮影するのはうれしいな。


スタッフさんの指示により、みんなで並び始める。私と翔さんはさすがに最前列の真ん中だ。


「では、撮りまーす」

カメラを構えた男性スタッフさんが私たちにそう言った、その時だった。



「あなたっ、どこから入ったんですか!? きゃっ」

さっきまでいた披露宴会場の方から女性スタッフさんのそんな声が聞こえてきて、みんなで視線をそちらに移す。

すると。
そこにはTシャツにジーパン姿という、披露宴会場にはそぐわない恰好をした見たことのない中年男がそこにいて。
そして、彼はバットを片手に、

「俺は金もないし職もないし彼女もいない! 幸せな奴らが許せない! うわあぁ」

と、叫んでいる。


ちょ、誰あれ。私の身内ではないし、もちろん翔さんの身内でもないだろう。ほんとに誰だ! ていうかどこから入ったんだ!


さっきの女性スタッフさんは、突き飛ばされただけでケガはしていなそうだ。良かった。


でも、まさか私、こんな大事な日にまで、”犯罪を呼ぶ女”になるなんて!



「暴れてやるうぅ! こんな式、めちゃくちゃにしてやんよ!!」

中年男は、バットを振り回しながらそんな危ないことを叫んでいる。

だというのに。
参列者のみなさんは誰も慌てず、クールにじっとしている。

そして、みんなで私を見てくる。

ちょ、みなさん。なんで私の方を見るの? 翔さんの親族まで……!


私が翔さんをチラ、と見ると、「行ってこい」の合図なのか、彼は親指を立ててクイッと中年男を指差した。

……なんなのよみんな! 私、今日の主役じゃないの!?

……私はイライラが募り、もうヤケになってズカズカと中年男に近づく。


「まずはお前からだ新婦ー!」

男がバットを振り上げながら私に駆け寄る。

もう、ウェディングドレスを着ているからとか関係ない。
私は男を盛大に背負い投げした。恨みと怒りが満ち溢れた、渾身の一本だ。


パチパチパチ……という拍手が響き渡る。
いらないいらない。そんな拍手いらないから、せめて。


「私、今日披露宴なんですよ!? ウェディングドレス来てるんですから、今日くらいは女性として見てください!」


私の叫びは高原に吸い込まれる。
翔さんが、「さすが、頼りになる妻だ」と隣で笑った。


……もう!



**End**
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