独身一般職(37) vs 新人リア充(20)
「今のことは忘れてくれなんて言えないけど。
だけど、気にしなくてもいいですから」


そういって彼は運転席から降りた。

私も続いて助手席を降りる。


私の前を歩く下風代理は鼻歌を歌いながら、職員玄関に向かっていた。

なんだかそれが気まずさを隠すために思えてきたから、私も言う通りにして、彼の前では気にしないようにしようと思った。


彼の背中をバシッと叩く。

「まったく…
あんたのせいで、帰るの遅くなったじゃない」

下風代理は八重歯を見せて笑ってくれた。


そう。
彼の前では気にしないようにする。

だけどこの時点での私の気持ちは、完全に下風代理の方に傾いていたのだ。

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