独身一般職(37) vs 新人リア充(20)
「どうしたの?車に忘れ物?」

「違うってば。
甘えたいんだって言いませんでした?
恥ずかしいんですよ、こんなこと言うの」


下風代理が私との距離を詰める。


…もしかして油断した?
やばい、犯される。


逃げ場はない。
車両に両側を挟まれ、背中には店舗の壁。


「…襲ったりなんてしませんよ」


ふっと笑う下風代理の目元は、暗闇のせいか切なく見えた。


「…10秒だけでいいんです。
抱きしめてもいいですか?」


ATMでの彼の言葉を思い出した。


『だけど、やっぱこういうときって、年上の女の人なんだよなぁ』


なんだかそれも理解できる気がする。


「…年上の女の人なら、勘違いされずに割り切ってくれるからよね」


「…やっぱ俺、最低ですかね」


「時と場合によるんじゃない?
少なくとも私は、こんなことであんたに惚れたりしないから…ほら、おいでよ」


口ではそういったけど、身体には力が入る。

彼氏ではない人に、抱きしめられる経験なんてない。


…もう、さっさとしてよ。

< 30 / 250 >

この作品をシェア

pagetop