独身一般職(37) vs 新人リア充(20)
こうして甘えてくる下風代理は、純粋に可愛いなと思う。
男としてというよりは、子供とかペットに近い感覚。

そんな甘ったるいような、またぬるいとも言えるような考え方もきっと、酒が回って惚けているからだろう。


そもそもこの人は、さっき振られた彼女のことを吹っ切れていないと言っていたばかりだ。

寂しさを埋めるためにこうしていることだってわかっている。


だからどんなに酒に酔っても、彼の前では、自分の芯がぶれないように気持ちを強く持たないと。


「…ねえ下風くん。
今こうしていることも、酔いが覚めた瞬間に恥ずかしくなるんじゃないの?」


「うん。
だけど今こうして、だんだんと満たされていってる感覚の方が、恥ずかしさを上回るから」


「あんたはそれでいいかもしれないけど…
私にとってのメリットは?」


「うん、ないよね。…いてっ」


彼のおでこを軽くはじいた。


「はい、もうおしまい」


彼は私の右肩に甘い重みを残して、玄関を出ていった。

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