再会


早々に朝食を済ませ、荷物をテルミニ駅のロッカーに預けに来た。

今日の夕刻には全員ローマを発つ予定だ。

リリィは空港へ、私たち三人はミラノへ……


「さぁてと、早起きしたから今日は一日が長いな。どうやって回ろうか?」


アキが照り付ける朝日を眩しそうに見上げて言った。


「もっちろん決まってるじゃない!」


リリィは何やら自信満々だ。


「決まってるって?」


私が首を傾げると、彼女は「これよ」と言って、持っていたガイドブックの写真を指し示していた。


「あぁ“ローマの休日”か」


アキが覗き込んだ本の中には、スペイン広場でジェラートを食べているオードリー・ヘップバーンの写真が載っていたんだ。


「そうよ。ここはローマだもの。今日はアン王女の気分で、ローマを巡るの!」

「それ、いいね、リリィ!私も、あの映画、大好きなんだ。トレヴィの泉や真実の口も見てみたいし!」


はしゃぐ私たちの後ろから「しゃーないなぁ」と言いながらも、とびっきりの笑顔でジュンもアキもついて来てる。


「リリィの場合は“王女様”じゃなくって“女王様”やけどなー!」

「なんですってー?!」


ジュンもリリィも、笑顔が眩しかった。

二人のじゃれ合う姿もこれが最後なのかな……





こうして、私たちの“ローマの休日”が始まったんだ。




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