エリート専務の献身愛
 浅見さんがポケットからおもむろに出したのは、私が瑛太くんからもらった手紙だった。
 落としていたことも知らず、慌てて受け取り中身を確認する。

「これがあの部屋の前に落ちていたからね」
「あの、浅見さんはどうして……」

 もう聞かずにはいられなかった。
 口をついて出た言葉は、もう取り消すことはできない。

 レナさんという女性のことはまだ気になっているけれど、それ以上に今の状況に期待を隠せない。

 宛名のない拙い手紙を、私がもらったものだとわかってくれる人。
 私のことを見てくれているって、どうしても思わずにはいられなくて。

「電話を切られるし、少ししてから掛け直したら繋がらないし。心配になって、気が付いたら瑠依がいるだろう場所に足が動いていた」

 私を心配して……。
 私のことなんて、知っていることなんてほんの少しのはずなのに。それでも、迷わず行動に移して探していてくれたの……?

 心の奥に閉じ込めていた感情が瞬く間に溢れ出す。
 こんな人に一緒に居て欲しい。彼の隣にいたい。

 堪え切れず、そんな欲望が思考を支配する。

 浅見さんを見上げ言葉を選んでいると、不意打ちで軽く頬を叩かれる。一瞬感じた痛みなんかよりも、改めて見上げた浅見さんの表情に驚いた。

「危機管理がなってない! 自分の身は自分で守る意識を常に持て!」

 眉を吊り上げ、真剣な目を向けられている。怒鳴ったわけではないけれど、いつもよりも荒げた語尾に肩を上げた。

「ご……ごめんなさい」

 申し訳なくて、不甲斐なくて、彼の視界から消えてなくなりたい。
 私は俯いて小さな声で謝った。

 優しい浅見さんにあんな顔をさせた。もう顔を見られない。
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