エリート専務の献身愛

 月島総合病院は、私が担当するエリアで最も大きな病院だ。
 ここを訪れるのは大抵午後。院内も広いから、この病院の先生を回るだけで数時間掛かる。

「お姉ちゃん!」

 さすがに疲れを感じているところに突然後ろから抱き疲れて驚いた。

「瑛太くん!」

 私が先輩について回っていた頃に小児病棟で知り合った、入院患者の男の子。
 瑛太くんは、私を見つけるといつも話し掛けてくれる。

 それがとてもうれしくて、ついつい長居をしてしまうのは私だけの秘密。

「走って身体は大丈夫?」

 私の胸辺りまである背丈は、昨年初めて会った時と比べて随分伸びた気がする。
 瑛太くんの頭にポンと手を置き、少し屈んで目線の高さを合わせた。

「平気だよ、このくらい」
「そう。あ、でも、どのみち病院の中は走っちゃだめだよ」

 得意げに『平気』と口にする姿も成長を感じられて、なんだか気分はお母さんのようだ。

「こんにちは。いつもうちの子がすみません」

 そんなことを思っていると、本物のお母さんがやってきて会釈される。
 私も慌てて頭を下げ、手を横に振って答えた。

「あ、こんにちは。いえいえ。看護士さんでもないのに慕ってもらえている気がしてうれしいんです」

 線の細い身体の瑛太くんのお母さん。こんなに華奢な身体で一生懸命瑛太くんを支えているんだなと思うと、自分なんてまだまだだと背筋が伸びる思いになる。

 一年前、瑛太くんが六歳になる年に慢性腎炎と発覚し、それから入退院を繰り返しているのだと聞いた。

 その疾患を抱えている人は、ほとんどの人が一生付き合っていくというもののはずなのに、瑛太くんもお母さんもいつも笑顔だ。
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