エリート専務の献身愛
「勉強楽しい?」
私は瑛太くんの手にある教科書を見て、院内学級から戻るところだったんだとわかる。
私の問いかけに、瑛太くんは「うん」と大きく頷いて白い歯を見せた。
「ねぇね。今日は? なんの味?」
「瑛太!」
私の袖口をクイクイ引き、わくわくした顔で聞いてくる。
それを見たお母さんは、厳しい口調で名前を呼んだ。
けれど、これもまた恒例のこと。
「さあ? なんだろうね?」
私は瑛太くんに背を向けてから、ニッコリ笑って振り向いた。そして、彼の前に握った両手を出す。
「じゃあ、こっち!」
真剣な顔つきで左手を指差さされた私は、少し時間を溜めて手のひらを見せた。
「あ、コーラって書いてる! やった! ねぇねぇ、そっちは?」
「瑛太、いい加減にしなさい」
小さな赤い袋に入った飴を手にしながら、もう片方の正解を催促する。
瑛太くんを叱るお母さんに笑顔を向け、改めて瑛太くんと向き直した。
「当ててみて。当たったらあげる」
「えー? 難しいなぁ。こっちがコーラだったから……」
握っていた右手を軽く上げて提案すると、瑛太くんは真剣に考え始めた。
そんな姿がまた可愛くて、つい仕事中と言うことを忘れてしまう。
「ラムネ味とか?」
「じゃあ、正解発表ね」
「えー! ソーダ!? もうっ。当てるなんて無理だよ!」
大袈裟に崩れ落ちるという行動も、子どもながらで微笑ましい。
飴玉いっこでこんなに必死になって貰えるのは、今だけかもしれない。
「そうだよね。じゃあ敢闘賞! これもあげる。でも、お母さんに預かってもらうね」
クスクスと笑い、右手にあった水色の小袋を瑛太くんのお母さんに手渡した。
「すみません。いつも」
「いえ。私こそ。瑛太くんに声を掛けてもらえるようになってから、ここに来るのが楽しみになりましたし。でも、早く退院できるといいですね」
そう。ここにいるっていうことは、本来喜べないことだ。
だから、本当は『楽しみ』とか『うれしい』とか思っちゃいけないし、言ってはいけないことなんだ。
口にしてから肩を窄めると、瑛太くんのお母さんは嫌な顔をひとつも見せず、終始笑顔でいてくれた。
私は瑛太くんの手にある教科書を見て、院内学級から戻るところだったんだとわかる。
私の問いかけに、瑛太くんは「うん」と大きく頷いて白い歯を見せた。
「ねぇね。今日は? なんの味?」
「瑛太!」
私の袖口をクイクイ引き、わくわくした顔で聞いてくる。
それを見たお母さんは、厳しい口調で名前を呼んだ。
けれど、これもまた恒例のこと。
「さあ? なんだろうね?」
私は瑛太くんに背を向けてから、ニッコリ笑って振り向いた。そして、彼の前に握った両手を出す。
「じゃあ、こっち!」
真剣な顔つきで左手を指差さされた私は、少し時間を溜めて手のひらを見せた。
「あ、コーラって書いてる! やった! ねぇねぇ、そっちは?」
「瑛太、いい加減にしなさい」
小さな赤い袋に入った飴を手にしながら、もう片方の正解を催促する。
瑛太くんを叱るお母さんに笑顔を向け、改めて瑛太くんと向き直した。
「当ててみて。当たったらあげる」
「えー? 難しいなぁ。こっちがコーラだったから……」
握っていた右手を軽く上げて提案すると、瑛太くんは真剣に考え始めた。
そんな姿がまた可愛くて、つい仕事中と言うことを忘れてしまう。
「ラムネ味とか?」
「じゃあ、正解発表ね」
「えー! ソーダ!? もうっ。当てるなんて無理だよ!」
大袈裟に崩れ落ちるという行動も、子どもながらで微笑ましい。
飴玉いっこでこんなに必死になって貰えるのは、今だけかもしれない。
「そうだよね。じゃあ敢闘賞! これもあげる。でも、お母さんに預かってもらうね」
クスクスと笑い、右手にあった水色の小袋を瑛太くんのお母さんに手渡した。
「すみません。いつも」
「いえ。私こそ。瑛太くんに声を掛けてもらえるようになってから、ここに来るのが楽しみになりましたし。でも、早く退院できるといいですね」
そう。ここにいるっていうことは、本来喜べないことだ。
だから、本当は『楽しみ』とか『うれしい』とか思っちゃいけないし、言ってはいけないことなんだ。
口にしてから肩を窄めると、瑛太くんのお母さんは嫌な顔をひとつも見せず、終始笑顔でいてくれた。