恋文参考書








章たちと4人で試験勉強をしてから、10日が過ぎた。

無事……かはまだわからないけど、なんとか試験を終えて、今日は答案用紙が返ってくる日。



試験が終わると席替えをすることにしているうちのクラスは早速席替えを済ませていて、今までとは違う座席だ。

と言っても、それはあたし以外の人だけ。

くじ運がいいのか悪いのか、あたしの座席は前回と変わらず窓際の1番後ろ。

正直驚いたんだけど、それだけじゃない。



「答案返ってくんの、こえーな……」



あたしのひとつ前の席の人は、なんと章。

目の前で金髪が光を反射していて、少し眩しい。



ここ最近で一気に関わりが増えたなぁとなんだか不思議な気分になる。

そしてついでに試験は全部終わっているのに今さらなにをこわがっているのかと思う。



「章ってよく北冠受かったよね」

「うるせぇ」



あたしの言葉にうつむいて机の模様とにらめっこしていた章は、わざわざあたしの方を振り向いて怒っているけど、本当に。

一緒に勉強していた感覚からして信じられない。

あたしたちの学年の入試ってそんなかんたんだったっけ?



そんなあたしの考えがわかったのか、章はため息に言葉をとかす。



「薫と同じ学校行きたくて、必死で頑張ったから」

「そっか」



誰かのために頑張ること。

誰かのために頑張れること。

それはすごいことで、章の強みだと思う。



そういう存在がいることっていいなぁ。素敵だなぁ。

薫先輩への想いひとつでは章はなんだってできるんだ。



そんな彼を、あたしは尊敬している。






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