恋文参考書




そして今日、ようやく冬休みが明けた。

久しぶりの学校で、久しぶりのクラスメートと顔を突きあわす。

ちらちらと視線を送るもなんの反応も示さない章の背を見つめるだけでその日は終わる。



そしてなにより、誰より、緊張する相手がいるはずの場所へと足を運ぶ。



きい、と音を立てて扉を開ける。

古びた紙の柔らかく乾いた香りが鼻をくすぐる。



少しほこりっぽい、だけど慣れたそこをまっすぐに進み、深く息を吸いこむ。

そしていつもの作業スペースに顔を出し、とめていた呼吸を緩めた。



「章……」



恋文参考書をぱらぱらとめくり、今までの手紙の練習のあとをゆっくりとたどっていた。

その指先が動きをとめ、変わらない金髪がきらきらと光を振りまきながら、整った顔があたしの方を向いた。



「……久しぶり」

「うん」

「座れば?」



すっかりいつもどおりの様子を見せる章に、ほっとする。

ツンケンしながらも優しい彼に頰を綻ばせ、あたしも章の隣に腰を下ろした。



新年のあいさつ、近況の報告を済ませる。

ぎごちないながらも会話を続ければ、以前のようなやりとりができるようになり、息を吐き出した。






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