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桜は不思議でならなかった。


それよりなにより、あたしたちは一体何をしようとしているんだろう?


頭の中はほとんど真っ白で何も考える事はできなくなっていた。


ただ体が勝手に動くのだ。


このフェンスを乗り越えて、更にその先に足を踏み出す。


それが生まれてきたころからの使命のように、勝手に動く。


恐怖や不安なんて少しも感じていなかった。


みんながどうして叫んでいるのか、泣いているのか、桜にはわからなくなっていた。


「桜、桜、ねぇ……やめてよ……」


美夏の声が情けないほどに震えていて、桜は思わず声をあげて笑っていた。


「な……にが、おかしいの? ねぇ、桜……」


美夏が話しかけるたびに、桜の笑い声は大きくなっていく。


まるで狂ったような笑い声に、美夏は思わず後ずさりをしていた。


桜に伸ばしていた手が離れる。


その時だった、大きな音がして屋上のドアが開き友香と正樹が走って来た。
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