範囲指定ゲーム
古い校舎はあちこち劣化が進んでいるし、大きな動物なら窓ガラスを割ることだって平気でできるかもしれない。


千夏の不安は友香にもよく理解できた。


「死体のグラウンドに移動させちゃ、ダメ?」


千夏の言葉に悠斗が目を見開いて千夏を見た。


「そんな事、できるわけないだろ?」


悠斗が千夏をたしなめるようにそう言った。


「だって……このままじゃ生きてるあたしたちまで……!」


悠斗も千夏の言いたい事はちゃんとわかっていた。


だけど、先生の教室に運んだ生徒たちも、昨日まで一緒にいた仲間なんだ。


その仲間を野生動物の餌食にするという事が、どうしても納得できなかった。


「死体の味に馴れてしまうと、今度は生きている俺たちが狙われるぞ?」


悠斗はできるだけ千夏を刺激しないように、穏やかな口調で言った。


千夏は今にも泣きだしてしまいそうな表情で悠斗を見ている。


同じチームの美樹はなにも言わずに2人の様子を伺っていた。


しかし、千夏はもうそれ以上口を開くことはなかったのだった。
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