範囲指定ゲーム
☆☆☆

4月16日。


青谷高校1年3組は宿泊授業を受けるためバス移動をしていた。


小野友香(オノ トモカ)はバスの中央くらいに座り、外の景色を眺めていた。


学校を出た時は都会的だった風景が、今は田んぼや畑に染まっている。


3組のみんなは田舎風景に興味がなさそうでおしゃべりに夢中だけど、友香はこういう風景が好きだった。


岡山の田舎のおばあちゃんの家を思い出す。


最近あまり遊びに行けていないし、連絡でも取ってみようかな。


おばあちゃんとおじいちゃんが腰をかがめて田植えをしていた光景を思い出す。


『いまどき手で植えているの!?』


驚いてそう聞くと、2人は大きな声で笑って『これは機械では植え切らない場所に植えているんだよ。

後植っていうんだ』と、教えてくれたっけ。


2人は笑いながらも孫のあたしが都会に出てしまった事を少し残念に感じていたようだ。


友香が1人そんな事を思い出していると、隣の席の秋田美夏(アキタ ミカ)が肩を叩いて来た。


「なに?」


友香がそう聞くと、美夏は「シッ」と人差し指を立てて見せた。


そしてその指をバスの前方へと向ける。


窓際の友香は前の様子がよく見えなくて立ち上がって確認した。
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