不安の滓
　帰宅してから、無くしてしまった保険証を探す。過去の俺は、一体どこに保健証を置き忘れてしまったのか、小一時間ほど捜索してみたのだが保健証は一向に姿を現さない。

　一日、風邪気味のところを無理して働いたこともあって、若干なりとも風邪の症状は悪化している。
　風邪ていどのことで会社を休むわけにもいかない。
　せめて病院に行き、注射の一本でも打ってもらい、何日分かの薬をもらって気休めでも良いので治療しておきたい。
　その為には、保険証が無いと――無保険診療で高い金を支払うのは御免である。
　こういう時のために会社で社会保険に加入しているのだから――。

　保険証は意外な場所から見付かった。
　いつもの戸棚の中、一番奥に入り込んでいた。
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表紙・目次

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