アフタヌーンの秘薬
「食事はどこに行きましたか?」
「叔母様夫婦のお蕎麦屋さんです」
「え? 本当にそこに?」
「はい……」
何か問題なのだろうかと運転席の月島さんを見た。
「そうですか……聡次郎が三宅さんをあそこに……」
「だめでしたか?」
「いいえ、聡次郎が家族以外をあの店に連れて行ったことがなかったので」
そういえば叔母様もそんなことを言っていたっけ。
「それだけ三宅さんのことを考えているということか……」
「え? どういうことですか?」
「いえ、今のは忘れてください」
月島さんの言葉が気になった。私のことを考えているというのは、私を偽婚約者として押し通すことを深く考えているという意味だろうか。
「実は僕は未だに聡次郎が偽の婚約者を立てたことが気に入らないんです」
「そうですね。私もです」
私はもちろん月島さんも聡次郎さんの理解しがたい計画に無理矢理付き合わされている。
「僕は聡次郎に奥様が決めた相手と結婚してほしいと思っています」
「そう……なんですね……」
これはショックだった。月島さんは聡次郎さんの味方なのだと思っていた。本当は奥様と同じく私の存在に納得していないということだ。
「龍峯の今後のために、より良い結びつきを持つのはいいことですから」
「はい……その通りだと思います……」