アフタヌーンの秘薬

「花山さん、まだ何かございますか?」

私は嫌みを込めて言った。特別扱いされた私にこれ以上文句があるなら言ってみなさいとこっちもケンカ腰だ。

「もういいです……」

「では失礼します」

打ちのめされた花山さんを置いて聡次郎さんを追ったけれど、廊下にはもう誰もいなかった。

私を守ってくれたのかな?

普段私をからかう態度の聡次郎さんが今度は守ってくれた。今までなら怒られて当然と花山さんに加勢しそうな感じだったのに。
この間の気まずい会話のままだから、会ったらお礼言った方がいいのかもしれない。

「三宅さん大丈夫だった?」

お店に戻ると川田さんが心配して私に駆け寄った。

「大丈夫です。専務が庇ってくれましたから」

「聞いてたよ。花山さん大人しくなったわね」

お店と事務所を繋げる扉はほとんど開いていることが多い。先ほどの聡次郎さんと花山さんの会話も川田さんに聞こえていたのだろう。
川田さんは事務所への扉を閉めた。これで事務所にいる花山さんに会話は聞こえない。

「花山さんって専務や社長秘書や男性社員にはいつも態度が違うのよね」

「そうですね。わかりやすいです」

「逆に女子社員への態度は酷いから、みんな影で花山さんの悪口を言っているみたい」

それは想像できた。花山さんの聡次郎さんや月島さんに接する態度は面白いほど気持ち悪い。

「三宅さんって奥様に頼まれて働いているの?」

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