3度目のFirst Kiss
平凡な日常
月曜日は、いつも通りの朝だった。

どんな事件があったとしても、家族の不幸と体調不良以外の理由で会社を休むなんて選択肢は、今の私にはもうない。

いつもより早目に家を出て、駅前のカフェでちょっと高めの朝食をゆっくりと堪能してから、いつも通りの満員電車に飛び乗った。

「おはよう。金曜日はお疲れ様。」
と挨拶が飛び交っている。

うちの会社は、イベント企画や運営事業をしている業界では中堅クラスで、「株式会社アテナ・プロデュース」という社名だ。社長曰く、ギリシャ神話の女神から取った名前らしい。

取引先は、イベントを開催するぐらいの大手企業が多く、後は、公共イベントや医学会が大きなクライアントになっている。

私は、今は、営業1課にいて、主に医学会をメインに担当している。
医学会は、ほぼ毎年あるので、安定した受注が見込めるから、会社の業績の柱にもなっている。
大病院の院長様達が顧客となるので、絶対に失敗は許されない部署ではある。

だから、1課は社歴の長い社員が多い。

営業2課は、公共イベントを担当している。入札案件がほとんどなので、苦労が多い割には利益が少ない様だけど、会社にとっては、役所との繋がりはとても重要なのだ。大きなイベント開催になると、色々な許可申請が必要になるから。

生田君と田崎君が所属している営業3課は、企業の様々なイベントを担当している。
勉強会などの様な物もあれば、スポーツや音楽イベントなんかもあって、同じ営業部でも若い社員が多く、活気があって他の2部署とは雰囲気も違う。

私も1年前までは、あそこにいたのだけれど。

ある程度の年齢になる女子社員は、数人の柱を残して、1課か2課に振り分けられるのが、この会社の暗黙の了解の様になっている。

ただ、移動の時に昇進もしていないのに、割と大幅な昇給もしてもらったし、自分の年齢も自覚しているから文句も言えない。

若い女子社員には、「墓場」と呼ばれているけれど、私も昔はそう思っていたから仕方がない。
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