3度目のFirst Kiss

彼女が部屋着を着ている間に、チャイムが鳴った。

「えっ、もう来た!先輩、出てもらっていいですか?多分、裕樹だと思うんで。」

私がオートロックの画面を覗くと、両手に沢山の荷物を抱えた矢沢さんが立っていた。

「はい、広瀬です。今、開けますね。」

矢沢さんは、私が解錠ボタンを押すと、開ききらない自動ドアをすり抜けて、中に入って行くのが、インターフォンのカメラ越しに見える。

今度は、すぐに玄関のチャイムが鳴る。

ドアを開けると、私の横をすり抜けて、真っ先に
奈緒子のいるベッドに向かった。

「大丈夫か?奈緒子?熱は?何か欲しい物はあるか?」
矢沢さんは、立て続けに、奈緒子に質問している。

これじゃあ、奈緒子の答える隙なんてないよ。

「大丈夫。ちょっと、疲れが出ただけだから。裕樹は、いつも大袈裟なんだよ。」

「お前が土日もなく働き過ぎるからだろ。いつかこうなるんじゃないかって、この1ヶ月、心配してた俺の身にもなれよ。」

「今週、頑張れば、後は何とかなるから。私は、まだ、若いんだから、大丈夫だって。」

矢沢さんも、奈緒子には敵わない様だ。

「取り敢えず、今日は、ここに泊まるから、お前は寝とけよ。」

「はいはい、それより、綾香先輩には、ちゃんと挨拶してくれた。すごい迷惑かけちゃったんだから。」

奈緒子にそう言われて、矢沢さんは、初めて、私の
存在を思い出したようだ。
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