Drinking Dance
「直子さん、どうかしましたか?」

「い、いえ…」

質問してきた星崎さんに首を横に振って答えると、
「私のことを名前で呼んだみたいに、石原さんのことも名前で呼んでくださいね。

名字じゃなくて名前ですよ、名前」

私は言った。

チクチクと胸が痛い。

何なんだ、これは。

胸の痛みを隠すように、ズズッと抹茶ラテをすすった。

「ありがとうございます。

名前で呼んだら、結構距離が縮まるものですね。

今度のデートでは石原さんのことを“るみさん”って呼びます」

当たり前のように、星崎さんは彼女の名前を出した。

何気に名前が出てきただけなのに、私の胸がチクリと痛んだ。
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