白い雪が降り積もるように


驚いて洗い終わって濡れた髪に構うことなく、勢いよく玖下さんの方を振り返った。




振り返った先の彼は穏やかに笑っていた。





「……君は今も昔も抱えすぎだよ。少しは誰かに甘えることを覚えな……」





その姿は幼い頃に頼りになった男の子に重なった。





何故、今までその記憶を忘れていたのだろう。





あの時、彼に抱いた感情が初恋というなら初恋を忘れてしまっていたことになる。





多分、今思い出したのはその時と少しだけ似ているからかもしれない。





大切な人を見失って、迷っている姿が。





今の私はあの時と同じで迷子だ。





自分の感情が整理できなくて、大切な人を失っても決断できない。





目的が分かっているのに、実行できない。




誰かが手を差し伸べてくれるのを待っている迷子と同じだ。





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