ほしの、おうじさま
40代後半、宣伝部の女性の中では一番のベテランさんで、係長の肩書きが付いている。


「一週間…正確には先週の水曜日から今日までだから8日間経過した訳だけど、何か困ってることとかない?」

「あ、いえ」


ちょうどミニトマトを頬張っていた所だった私は急いでそれを咀嚼し飲み込み返答した。


「渡辺係長を始め、皆さんに手取り足取り教えていただいているので、不安に思う事はありません」

「そう」

「星さんてすごく素直で言われた事を一生懸命せっせとこなしてるから、何でも理解と上達が早いんですよー」


斎藤さんの後に、同じマーケティング課の5年先輩となる田中さんが陽気に会話に加わった。


「私の新人の頃と比べたら断然星さんの方が優秀だと思います」

「そ、そんな。滅相もないです」


その過大過ぎる評価に大いに恐縮しながら言葉を返す。


「付きっきりでご指導いただいているから何とか動けているだけで、一人にされたらたちまち大パニックです」

「そりゃそうよ。私なんか20年以上やってたって未だに戸惑う瞬間があるんだから」

「いくらなんでも一週間くらいで新人さんに完璧に仕事をこなされちゃったりしたら、私達の存在意義がなくなっちゃいますよねー」

「そうそう。それに、新入社員研修ですでに話は聞いてると思うけど、ウチの会社は社員間の報告、連絡、相談を重視してるから」
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