ほしの、おうじさま
その姿を横目で見ながら私は先に歩き出していた渡辺さんに続いてそこを離れ、エリア内を移動し、オペレーター室から退室した。

無口で無愛想で、会話する際はこの上ない緊張を強いられる方かと思っていたのだけれど。

ところがどっこい、高橋さんはマーケティング課内で一番、個人的に興味深い方向にキャラが立っている人だった。
もっとその生態を観察してみたくなるというか…。

今は渡辺さんにべったりと貼り付いている私だけど、一人立ちしたら、高橋さんと一緒にオペレーター室担当になる時も当然ある訳で、接する機会も断然増えて行くことだろう。

その際にまた、高橋さんのあの華麗なる一人舞台の様子を目の当たりにする機会に恵まれるかもしれない。

あ、いや、その状況イコール、役職者が矢面に立たなければならないご意見が寄せられた時で、言い替えれば、それだけお客様が不愉快な目に遭ってしまったという事を示している訳だから、そんなシチュエーションを期待していてはいけないのだけれど。

とにかく私の中での高橋さんに対する印象が、ほんの十数分前とはガラリと様変わりしたのは間違いない。
職場内の不安要素が一つ解消して、ホッと胸を撫で下ろした私なのであった。
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