ほしの、おうじさま
「おお、そうか。それ関係は全部7階の資料保管庫に仕舞ってあるんだけど…」


解説しながら課長はデスクの引き出しを開け、中から鍵を一つ取り出した。


「保管庫の扉は社員証で開くとして、データが仕舞われてるキャビネットはこのアナログな鍵が無いと開けられないし、なおかつマーケティング課の社員が必ず開閉する決まりなんだ」

「あ、そうなのですね」

「だから、そうだなぁ…。星さん!」


一瞬思案してから課長はそう声を張り上げた。


「保管庫にはもう何度か出入りしてるよね?」

「あ、はいっ」


さりげなく耳をすませて課長と星野君の会話を聞いていた私は、突然名指しされた事に慌てながらも立ち上がり、デスクへと近付く。


「それじゃあ星野君を案内してあげてくれるかな。同期同士の方が気兼ねなく動けて良いだろ?」

「分かりました」

「じゃあ星野君そういう訳だから。星さんに付いて行って」

「はい。ありがとうございました。失礼いたします」


課長にそう挨拶した後、星野君は私に向き直った。


「それじゃあ星さん、お願いします」

「は、はい。では行きましょう」


星野君の言葉を合図に私達はその場から歩き出す。


「ごめんね。お手数おかけしちゃって」

「そ、そんな!仕事なんだから、全然大丈夫だよー」


なんて会話を交わしながら廊下、階段を進み、7階を目指した。
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