ほしの、おうじさま
その瞬間、富樫さんがちょっと驚いたようにこちらにチラッと視線を向けたけれど、何かを言う事もなく、すぐに顔を前に戻した。
……どうやら私は野崎さんに本格的に嫌われてしまったようだ。
やっぱり、こうなっちゃうんだな。
やっぱり私はサバサバさんとは相容れない生き物なんだ。
それにしても今回はギクシャクするまでの時間があまりにも短すぎだけど。
出会って数日だもんね。
今までで最短記録じゃなかろうかと思う。
でも、こじれちゃった以上はもう仕方がないよね…。
頑張って関係を修復させる気力はない。
私はため息を吐きながら放置していたペットボトルに口を付け、フタを閉めて、テーブルの左側、なるべく体から離れた位置に置いた。

そのやり取り以降、野崎さんが私に話しかけて来る事はもうなくなった。
挨拶と、研修に関することでこちらから問い掛けた際にかろうじて単語で返されるくらい。
しかし、お昼や休憩時はいつものように私は主に向井さんと、野崎さんは他の人とお話していたので、彼女とプライベートな会話ができなくても全く、これっぽっちも支障はなかった。
もちろん心情的には色々複雑ではあったけれど。
そうして若干の不安要素は残りつつも、新入社員研修は何とか無事に終了し、私達は配属された部署にて、いよいよ本格的に社会人生活をスタートさせたのであった。
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