ほしの、おうじさま
☆☆
「それじゃ、今日もまずは立ち上げ作業から始めてみようか」

「ハ、ハイ」

朝のオフィスにて。
上司から下されたその指令に従い、私は初日に渡されたマニュアルを手に、そこに記載されている手順通りに作業を開始した。
ほどなくして無事にミッションを完了する。

「うん、バッチリだね」

私と共にあちこち移動しながら成り行きを見守っていた上司、マーケティング課係長の渡辺さんに視線を向けると、満面の笑みでそう評価をしてくれた。
その瞬間、私はホッと胸を撫で下ろす。
所属部署での本格業務に突入してからすでに一週間以上が経過していた。
以前から認識していた通り、マーケティング課は早番遅番の交替勤務で、その期間中にどちらも経験したので、1日の仕事の流れはだいたい把握できた事になる。
といってもあくまでも「流れ」だけだけど。
一人で支障なく動けるまでにはまだまだ先輩方に色々とご指導いただかなくてはいけないだろう。
しかしありがたい事に、マーケティング課(というかおそらく0to0全体)の新人教育体制はしっかりと整えられており、最初の1ヶ月間は専属の教育係の方と同じシフトで、みっちりマンツーマンで指導していただけるのだった。
そして私の教育係となって下さったのが今私の右隣にいる係長の渡辺さんである。
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