鈍感ちゃん(君)を攻略せよ!
そう言ってたこ焼きを持ってきた葵と目が合わないように、恐る恐るたこ焼きを口に含む。
……これ、あれだよね?
世間で言う、あーんってやつ。
まさか私が経験することになるなんて考えたこともなかったや。
『美味しい?』
『……ん。やっぱり、明太マヨ最高っ』
恥ずかしくて混乱してても、やっぱり明太マヨは美味しいからすごいよね。
『じゃあ、俺にもやってくれるよな?』
『……え?』
早く早く、と急かされて、流れでたこ焼きを冷ますところまでしたのは良いけど。
待っている葵と、自分で持っているたこ焼きを交互に見る。
これを私が葵にあげろってことだよね?
……よし、顔を見なければいける!
『目、瞑ってよ?』
『無理。ほら、早く』
もう、なるようになれだ!
目をつぶって葵の口にたこ焼きを運び、慌ててお箸を引っ込める。
『本当にうまいな、明太マヨ。
俺、今日からたこ焼きは明太マヨだな』
そう言ってニッと笑った葵から顔をそらして、少しだけ覚めたたこ焼きを無心で食べる。
私も馬鹿だけど、葵も馬鹿だ。
葵のせいで、たこ焼きの味が全くわかんなくなってるよ。