言葉にしなきゃ分からないこと

最後の日

生まれ育った地元で過ごす最後の日、私は普通に学校に行って普通に家に帰ってきた。クラスの皆の前での挨拶も断って先生にだけちょっと挨拶した。
荷物ももうまとめた。
光星への手紙も書いた。光星は今日部活だから夜まで帰って来ない。だから光星が帰って来る前に発つ。
せっかく昨日見納めだと思って最後だと思っていつもよりちゃんと光星の顔を見て、バイバイ、いつもありがと、って言った。
光星の顔を見たら行きたくなくなっちゃうから。こっそり藤村光星様、と宛名だけ書かれた無地の封筒をポストに入れて出てきた。
頬を伝った涙を拭って振り返らずにタクシーに乗り込んだ。
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