放課後、ずっと君のそばで。


コウちゃんは、来ない。

多分。というか、絶対。


色々な壁を乗り越えてたどり着いた大会だ。


一番、コウちゃんに演奏を聞いてほしいのに......。


「今から本番を迎える人の背中に見えないんだけど?」


玄関で靴を履いていると、後ろからお母さんのため息混じりの声がして振り返る。


お母さんは腰に手を当て、もう一度ため息。


「何があったのか知らないけど、あなたの夢はなに?」


「.........」


「普門館、行くんでしょ?」


お母さん......。


「小学生の頃からの夢だったんでしょ?」


私は眉間にシワを寄せて唇を噛み締める。


そんな私の表情を見たお母さんは、腰から手を下ろし私の両肩を叩いた。


「莉子。人生は一度きりしかないんだからね」


「.........」


「大会も一度きり。やり直しはきかないんだから」


「......うん」


「後悔のないように全力を出す。まずは、それからでしょ?」


お母さんがゆっくり口角を上げる。


安心する、お母さんの優しい微笑みだ。


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