黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

解かれ始める真実




「・・・あらあら、キミたち随分仲が良いのね?」

目が色をやっと認識するようになった後、最初に視界に映ったのはにまぁっと口角を吊り上げるクワオアの顔だった。

その声に慌ててヘリオトロープの腕を振りほどく。

ちらりと彼の顔を横目を盗み見てみたものの、特に何の表情も浮かんでいなかったので、自分だけ何故こんなに慌てているのだろう、と少し恥ずかしくなった。

それを誤魔化すように辺りをぐるりと見渡す。

「ここ、は」

森の中なのは変わりないけれど、恐らく泥や土で作られているのだろうと推測される小さな家がいくつも建っていて、ここが確かに集落、つまりは村なのだと察することができた。

家の中からこちらを窺う顔がいくつも覗く。皆傍目にもふさふさとした獣耳を生やしている。

ヘリオトロープがちろと視線を向けると怯えたように首を引っ込めた。


「“あたし”たちの、村よ。

・・・ついてきて」

そう言って歩きはじめた彼女の揺れる尻尾を追う。

ちらちらと頬に刺さる視線を感じながら彼女に従って村の最奥まで進むと、入口に松明が燃える一際大きな家が見えてきた。他の家と格差の付けられたこの家はほぼ間違いなく長の家なのだろうと思う。

その中に迷いなく入っていくクワオアに、私は確かに長の貫禄を見た。


クワオアが指し示すまま、向かいの席にヘリオトロープと2人腰を下ろす。

クワオアが小さく声をかけると、部屋の中にいた従者の少年少女が一礼して退出して行った。

ぱたん、と音がしてこの部屋には3人だけになる。

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