黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

『―――かつてこのセカイにはひとつのクニしかありませんでした。

そして、初めにはひとつの種族しかいませんでした。彼らにはあらゆる魔法の力がありました。

しかし。

人々の笑顔のために使われていた、優しかったその力は、やがて争いに用いられ始めました。

その頃からです。

まるで人々に罰を与えるかのように、セカイに満ちていた魔法の力は弱まっていきました。

魔法の力が残されたのは、争いに関与せず、自然と共に生きていた者達だけでした。彼らには地上の争いから逃れるための羽が与えられました。

彼らはエルフと呼ばれ、平和な空の上で暮らし始めました。

そして魔法をほとんど喪った他の者達は、僅かに残されたその残滓の力を抱え、自分の力を奪われないために、似た特徴を持った者達で集まりました。

そして、互いの関わりを断つためにセカイを割ったのです。

今日彼らは、ケットシー、マーメイド、ヴァンパイア、ドワーフ、ヒューマン、そして、エルフと呼ばれています。

セカイの始まりを知っている者は、もういません。

―――しかし、その記憶は受け継がれてきたのです。


旅路でひとりの女性に出会いました。彼女は私が吟遊詩人だと知ると、自分の言葉を遺して欲しいと乞うたのです。

不思議な色に光る瞳で彼女は言いました。


“光の柱、空を分かちし時、セカイは終わりを告げる

混沌、羨望、悔恨を斬り裂いて

―――新しきセカイは開かれん

我らを導くは白髪をたなびかせし乙女なり”』


え?私自身の話なのではないかって?

・・・それは、秘密です。


・・・・・・あなた方の、良い旅路を、祈っていますよ。

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