黄金の唄姫と守護騎士はセカイに愛を謳う

ヘリオトロープが待ち構えていたように扉を開ける。

部屋を出て扉が閉まる寸前、後ろから躊躇うような小さな声が追いかけてきた。

「もしかしたら・・・プレティラはまだこのセカイにいるのかもしれない・・・死んだんじゃない。消えただけなのだから。

術返りの影響だから、その術を解除できれば、あるいは・・・」

きっと彼女のもう一つの望みの端っこ。

ケットシーの長としてではなく、彼女自身の願い。


大丈夫、クワオア。

今度は私はあなたへの恩返しとして、この旅でその方法もきっと見つけてみせるから。

私の母様を助けたばかりにずっと母様に、禁術に、罪悪感を抱き続けてその永い永い人生を送るなんて、そんなの母様だって望んでない。

私は僅かに頭を揺らして、振り返らないまま、扉を閉めた。


ずっと黙っていたヘリオトロープが屋敷を出て私を振り返った。そして私に向かって手を差し出す。

「何?」

「さっきの・・・出せ」

ああ、と私はペンダントを彼の手のひらに移した。

それはそうか。彼にとってだってとても大切な人なのだから。きっと私よりずっとずっと長い時間、母様と一緒に過ごしてきたはず。

でもヘリオトロープはそれに一瞥をくれただけで、フード取れ、と言った。

奇妙に思いながらゆっくりとフードを払い除けると、ヘリオトロープがペンダントの両端を指先で摘んで、私の髪を軽く持ち上げながら首に腕を回す。

気恥ずかしくて思わず意味も無く目を瞑った。ひんやりとした金属の感触が首筋に触れてひゅっと首を竦めたものの、すぐに体温に温まって思った以上に肌にしっとりと馴染んだ。

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